機密文書とは「その企業に関する極めて重要な文書であり、秘密保持を行わなければならないもの」であり、万が一情報漏洩してしまうと企業に甚大な損害を与えることになります。管理はもちろん、処理に関しても細心の注意が必要です。

機密文書の処理は自社内で行う方法と業者に委託する方法があります。

また、業者に委託する場合は大きく分けて3つの処理方法があります。

出張シュレッダー
溶解処理
シュレッダー処理

3つの処理方法について、それぞれの強みと注意点を把握しましょう。

自社に適した処理方法を診断してみよう

どのような処理方法が自社に適しているか判断する際にはセキュリティ(処理の安全性)とコストのバランスが大切です。

自社内で処理するか、業者に任せるか。

シミュレートの内容を確認して自社に適した方法を検討しましょう。

業者の機密文書処理方法は3種類。それぞれの強みと注意点

業者に機密文書処理を委託する場合、処理方法は大きく分けて「出張シュレッダー」「溶解処理」「シュレッダー処理」3つの処理方法があります。

これら3つの処理方法を具体的に説明して、それぞれの強みと注意点を紹介します。

「出張シュレッダー」は目の前で細断される安心感

指定されたオフィスの付近まで大型シュレッダーを搭載したトラックで出張し、依頼者が立会いのもと機密文書の破砕処理を行ってくれるのが出張シュレッダーサービスです。

強みとしては、

  • 目の前で破砕処理をしてもらえるので安心感が得られること
  • 機密文書をトラックで輸送しないので配送中に紛失するリスクを回避できること

そして、細断後はトラックの紙屑庫を密閉したまま古紙問屋または製紙工場まで運び、一定期間の貯留後にリサイクルされ、主にトイレットペーパーとして再生されます。

注意点としては、

  • 大型シュレッダー搭載車両の駐車場所の確保が必要なこと
  • 迅速なシュレッダー処理をサポートするためにファイルやクリップを外すなど事前準備の手間が多いこと
  • 屋外での作業になることが多いので、雨や強風など天候の影響を受けやすいこと
  • トラックのエンジンを付けたまま作業するので、排ガスや騒音で近隣オフィスに迷惑をかけてしまうこと
  • 処理中はその場で立ち会う必要があるため、事前準備と合わせて考えると意外に時間を要すること

などがあります。

利用する際には車両を停車する駐車場所の確保処理分別等の事前準備が必要となりますので、業者にしっかりと確認した上で利用しましょう。

・「溶解処理」は分業制のサービスなので慎重なチェックが必須

溶解処理とは製紙メーカーがトイレットペーパーなどの再生紙を生産する工程を利用させてもらう処分方法です。

機密文書処理を委託された業者は、その機密文書を製紙メーカーまで搬送します。パルパーと呼ばれる大型ミキサーのような機械に段ボール箱に梱包された機密文書を未開封のまま投入します。

パルパーに投入さた後は水と機械で攪拌されて繊維までバラバラの状態になり、情報抹消が完了します。業者が責任をもってパルパーに投入するケースもありますが、製紙メーカーの倉庫に搬入するだけのケース、そもそも製紙メーカーに搬入されるまでに複数の業者が関わるケースもあります。

強みとしては、

  • 原則として段ボールを未開封のまま処理できること
  • 焼却するのとは異なり、二酸化炭素が輩出されず、環境にやさしいリサイクルであること

そして、業者にとってはトラックだけあればサービス提供できて負担が小さいので溶解処理を提供する業者がたくさんあり、企業にとっては提供業者の選択肢が豊富なこともメリットです。

注意点としては、

  • 一番大切な情報抹消の工程(溶解の工程)を自社工場で行うのではなく、製紙メーカーを利用させてもらうことで成り立つサービス構造であること
  • 溶解処理のタイミングは製紙メーカーの都合や他の持込業者の影響を受けるので、サービス提供が不安定になるリスクを抱えていること
  • 製紙メーカーは機密文書処理を目的とする工場ではないので、業者の出入り、一時保管管理、社員教育などのセキュリティ対策が最優先ではないこと
  • 製紙メーカーの意向が強く働くため、商品生産に不都合なファイルやクリップなどの異物除去の指定が多いこと
  • 回収業者(委託先)と処理業者(製紙メーカー)という2つの企業が関わる「回収処理分離型サービス」なので、専門性に欠け、責任の所在があいまいになること

そして、溶解処理は基本的に業者は搬送しているだけであり、また、持込先の製紙メーカーに頼るところが大きい処理方法なので、信頼性も安全性も価格もばらつきが大きいことが特徴のひとつです。

溶解処理は提供業者が多いのでサービスのクオリティにばらつきがあります。

プライバシーマークやISO27001(ISMS認証)の第三者認証取得や、万が一の際の損害賠償保険の加入の有無、加入金額の確認は必ず行うようにしましょう。

利用する際は入念なチェックと必要に応じてお問い合わせすることをお勧めします。

「シュレッダー処理」は一社完結の専門企業が多数

機密文書をトラックで回収して、情報抹消専用工場で細断処理を行うサービスです。情報抹消専用工場は自社設備なので、回収から処理まで一社完結型のサービス(ワンストップサービス)が多いです。

強みとしては、

  • 機密文書処理は情報抹消専用工場で行うので、万全のセキュリティ対策が整っていて安全です。
  • 機密情報抹消を専門にしている業者が多いので、社員が業務に精通し教育も徹底されています
  • 一社完結型サービスなので、責任感が強い業者が多いです。
  • 機密文書の回収から処理まで自社でコントロールできるので、企業のご要望に合わせた柔軟なサービス提供が可能です。
  • 自社工場のセキュリティ管理下で異物除去ができるので、ファイルやクリップなどの分別を任せることができます。
    そして、細断処理後のシュレッダー片は、しっかりとリサイクル利用されているので環境にもやさしいサービスです。

注意点としては

  • 溶解処理にも該当しますが、トラックによる回収工程があるので搬送中の紛失リスクがあります。
  • ワンストップサービスだけに、情報抹消専用工場のセキュリティレベルや社員教育レベルなど、サービスクオリティへの注意が必要です

プライバシーマークやISO27001(ISMS認証)の第三者認証取得や、万が一の際の損害賠償保険の加入の有無、加入金額の確認は必ず行うようにしましょう。

自社で機密文書を処理するという選択肢

機密文書を処理するにあたって業者にお願いする方法と自社で行う方法のメリットデメリットについてご紹介します。

自社で機密文書処理するメリットとデメリット

自社で行う場合のほとんどがオフィスシュレッダーになります。

メリットとしては、

  • 廃棄したい時にすぐできること
  • 目の前で処理できること

が挙げられます。

一方でデメリットとしては、

  • シュレッダーの細断に時間と手間がかかってしまう。
  • シュレッダー屑がかさばってしまい掃除が面倒。
  • シュレッダーがオーバーヒートするため大量処理ができない(順番待ちが発生する)。

その他に重大なリスクとして、機密文書の管理も処理も社員個人に任されるため、仕事が忙しくなるとシュレッダーすべき書類が溜まってしまう、放置される、ヒューマンエラーが発生する可能性、などが挙げられます。

業者で機密文書処理するメリットとデメリット

業者に委託するメリットとしては、

  • 利用しやすい業者と契約できればシュレッダーに関わる時間を削減し、マンパワーを本業に注力できる。
  • 安心して任せられる業者と契約できれば、情報漏えいリスクを大幅に軽減できる。
  • 機密文書を大量に処理したいときも、早く、簡単に処理できる。

その他のメリットとして、オフィスにおけるシュレッダー処理はシュレッダー片がゴミになりますが、業者におけるシュレッダー処理はシュレッダー片がリサイクル利用されます。昨今SDGsの流れがありますので、リサイクル促進を企業で取り組みすることができることができます。

一方で、デメリットとしては、

  • 安心して任せられる業者を探すのが難しい。
  • 適切でない業者と契約してしまうと業務負担が十分に軽減されず、不満が残る支払いになってしまう。
  • 本当に正しく処理されるのか、情報漏えいのリスクが気になる。

などがあります。

業者選びを慎重に行いたい場合は、適切な質問をすること、客観的な判断基準を使うことです。

また、いきなり定期サービスを利用するのではなく、業者によってサービス品質が大きく異なるので、まずはスポットで利用してサービス品質を理解した上で定期サービスを利用することもお薦めです。

参考までにスポットと定期での利用別シーンが以下となります。

  • 書類の保管期限が過ぎた:スポット
  • オフィス移転と書類廃棄:スポット
  • 日頃のシュレッダーの手間を削減:定期
  • セキュリティの強化(鍵付きボックスの導入):定期
  • リモートワークと書類廃棄:スポット
  • 掃除&書類整理したら廃棄書類が大量に:スポット
  • カルテ:スポット

業者に依頼?自社で完結?検討ポイントは3つ

自社か業者か選定する際には3つのポイントを考慮して決定されるのが良いです。

セキュリティ面について

個人情報の保護について、法律では企業の管理責任が求められています。

自社で廃棄する場合は、管理責任能力が十分に満たされているかどうか、社員がリスクマネジメントを一定理解している状態、また、社内ルールやホットラインを遵守されているかを考慮した上で、問題ないようであれば自社での処理を検討されるのが良いでしょう。

業者に委託する場合は、セキュリティレベルは大きく異なるので見極めるポイントとして、例えばプライバシーマーク、ISO27001認証(情報セキュリティ)などの第三者認証を保有しているかどうか、というポイントがあります。

安全に処理します、安心です、という言葉ではなく、認証取得という「客観的事実」が大切です。

また、きちんと契約書の締結をする業者であるかどうか確認しましょう。

御社がプライバシーマークを取得されている会社であれば外部委託先チェックリストや契約書の締結は必須です。

そうでなくても、機密情報を扱うので契約書を締結しない取引は危険なので、少なくとも認証取得契約書締結の2点は必ず確認しましょう。

コストパフォーマンスのバランスについて

自社で行う書類の量などを参考にコスト(人件費)を想定してみましょう。

場合によっては業者に依頼するほうがお得になる可能性があります。

少量の書類であればさほど時間はかかりませんが、50人規模の会社であった場合、月に発生する廃棄書類量は100㎏近くになります。

かつ、シュレッダーする前作業として、ファイルを外したり、クリップやホチキスを外す時間も必要になります。シュレッダーは意外に多くの時間がかかっているものです。

一般的なオフィス用のシュレッダー処理能力は1時間で10kg~15kg程なので、準備や掃除の時間も合わせると10時間の人件費を要していることになります。

一例として日本シュレッダーサービス(定例回収)を利用した場合、100㎏辺り6,000円で処理することができるので、機密文書廃棄の専門業者に委託する方がお得であるとも考えられます。

なお、業者に依頼する際の費用の詳細については別頁をご覧ください。

内部リンク

業者に依頼する費用について

万が一のリスクが補填ができるか

書類廃棄の委託先が情報漏えいを起こしてしまった場合、企業は管理責任が問われます。

また、顧客情報流出事件としてマスコミが報道するのは処理の委託先ではなく、顧客情報を管理すべき自社の名前になるでしょう。

その場合、賠償金の支払いや企業イメージの低下など、経営におけるダメージは計り知れません。

したがって、委託先について情報漏えい保険の加入と補償金額は必須の確認ポイントとなります。

また、損害賠償リスクに関しては、業者の保険加入の確認だけでなく、自社の保険加入も確認しておくことが大切です。

業者の補償金額には上限がありますので、まずは自分の会社でも万が一に備えて対策しておきましょう。