不正競争防止法とは

事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律で、
つまりは他社の営業秘密を不正に取得・使用したり、他社の有名な商品名やブランド名を無断で使用したり、消費者を誤認させるような表示を行ったりする行為などが禁止して、
ビジネスにおける「公平な競争のルール」を定めたものです。

不正競争防止法違反となる行為

不正競争防止法第2条1項にて「不正競争」が定義されており、大きく10に分類する行為を違反と定めております。具体的な内容を以下に解説します。

周知表示混同惹起行為(1号)

「周知表示混同惹起行為」とは、「広く認識されている、他人の商品等と同一または類似の表示を使い、その他人の商品等との混同を生じさせる行為」のことをいいます。

例えば、すでに売れている他社製品に似たものを作り、消費者に対して真正品かどうかの判断を誤らせるような行為を行うと、周知表示混同惹起行為として同法上の不正競争に該当することがあります。

この行為に該当する要件として「商品等の表示(商標や商品の容器・形態など)が広く認識されていること」が定められていますが、必ずしも全国的に知られている必要はありません。ある地方でのみ知られているものであっても、保護すべき一定の事実状態が形成されていれば、該当するケースがあります(ニューアマモト事件 最決昭和34年5月20日刑集13巻5号755頁)。

混同を生じさせる行為に関しては、実際に混同が生じる必要はなく、そのおそれがある段階で足りると考えられています。

▼具体的な事例
ソニー「ウォークマン」事件 (ソニー株式会社 vs 有限会社ウォークマン)概要: ソニーの有名な表示「ウォークマン」と同一の商号を使用し、看板に使用。
結果、不正競争防止法に基づき、表示の使用禁止等が認められた。

著名表示冒用行為(2号)

「著名表示冒用行為」とは、「他人の著名な商品等の表示を、自己の商品等の表示に使う行為」のことです。

周知表示混同惹起行為に似ていますが、著名表示冒用行為の要件としては「混同を生じさせるおそれ」は必要ありません。

近年の有名な事例としては、マリカー事件が挙げられます。原告(任天堂株式会社)の有名キャラクターのものと類似するコスチューム等の表示を用いた被告の行為が問題となった事案です。同事件での行為は任天堂が公式に展開するサービスであるとの混同を一般に生じさせるものではありませんが、著名表示冒用行為にあたると認定され、差止め・損害賠償が命じられました(知財高判令和2年1月29日 裁判所ウェブサイト掲載)。

「顧客吸引力の不当利用」「ブランドイメージの汚染」といった被害が生じる可能性があるため、著名表示冒用行為は不正競争防止法で禁止されています。

この行為における「著名な」は、混同が要件とされていないこととの関係で、単に広く認識されているだけでは足りず、具体的には全国的に知られている程度が求められます。

▼具体的な事例
マリカー(現・MARIモビリティ開発)事件 (任天堂 vs マリカー)
概要: 任天堂の「マリオカート」やキャラクターのコスチュームを、公道カートのレンタル事業で使用。
結果、任天堂の表示が周知性を獲得しており、混同を招くとして、表示の使用停止と損害賠償が命じられた。

「たまごっち」事件
概要: バンダイのゲーム機「たまごっち」の類似商品。短期間でも強力な宣伝で周知性が認められたケース。

形態模倣商品の提供行為(3号)

形態模倣商品の提供行為とは、他人の商品の形態を模倣し、提供する行為のことです。

多品種少量生産品やサイクルが短い商品などは、意匠権を取得して法的保護を受けることが現実的に難しいといえます。物品の形状や模様、色彩等に対し、意匠権付与による保護を受けるには特許庁による登録が必要であり、時間やコストがかかるからです。

そこで、不正競争防止法では、商品の形態(外観や形状、模様、色彩など)を模倣・譲渡等をする行為を禁止することで、商品の形態を保護しています。

同法上の保護を受ける上で登録などの手続は不要であり、意匠法のように新規性なども求められません。ただし、ありふれた形態のものに関しては保護が受けられない可能性が高くなります。

▼具体的な事例
言葉を再生するぬいぐるみ事件
概要:雑貨販売会社が販売した話しかけた言葉を再生するぬいぐるみの頭部、胴体、腕の付き方、特徴的な機能がほぼ同一であるとして、不正競争行為と認められた事例。

営業秘密の侵害(4号~10号)

営業秘密への侵害も大きな被害が生じ得るものであり、同法で禁じられています。具体的には、「窃盗など不正の手段によって営業秘密を取得して、これを自ら使用または第三者に開示する行為」が不正競争に該当し得ます。

このような侵害行為が横行すると、企業が努力するインセンティブが減退してしまいます。また、競争の秩序が乱され、さらには国内で起こるイノベーションに悪影響を及ぼすため、規制しています。

同法上の営業秘密に該当するには、当該情報が以下の3つの性質を備えている必要があります。

秘密管理性
従業員等から見て、企業が秘密にしたい情報であることがわかる程度に管理されていること
有用性
技術上または営業上、有用な情報であること
非公知性
情報を管理している者以外が容易に入手できないこと

例えば、これらの性質を備える顧客名簿・顧客対応マニュアル・新規事業の計画・製造ノウハウ・設計図面などは、営業秘密に該当し得ます。
限定提供データの不正取得等(11~16号)
特定の者に対してのみ提供されているデータを、窃盗や不正アクセスなどの不正な手段で入手し、自ら使用または第三者に開示する行為も禁止されています。

例えば、自動車メーカーは災害時に公共機関へ車両の走行データを提供し、公共機関はこれを道路状況の把握などに利用しています。

その他、限定提供データによって新たな事業の創出や付加価値の向上といった効果が期待されますが、不正取得が行われるとこれらの利益が妨げられるおそれがあります。そのため、同法で保護しているのです。

▼具体的な事例
競合他社への情報提供(かっぱ寿司事件)
概要:カッパ・クリエイト(かっぱ寿司)の元社長が、前職のはま寿司の仕入れ原価や食材使用量に関するデータを不正に取得し使用。

営業秘密の参考記事:

技術的制限手段無効化装置等の提供行為(17~18号)

制限されているコンテンツの視聴・記録や、プログラムの実行を可能にする装置・プログラム・役務の提供も禁止されています。

例えば、依頼者から預かったゲーム機に対して「海賊版のゲームができるようにする改造」「セーブデータを改ざんする」といったサービスを提供すると不正競争に該当し得ます。

ほかにも、ビジネスソフトを不正に作動させるために用いるシリアルコードを提供したり、衛星放送の暗号を無効化するプログラムを提供したりすると、不正競争に該当する可能性があります。

ドメイン名の不正取得等の行為(19号)

Webサイトをインターネット上に公開する際には、一般的にドメインを取得する必要があります。ドメインとは、インターネット上で個々のWebサイトを識別するために割当てられる、番号等の組み合わせのことです。
要は、Webサイトにアクセスするために用いられる文字列等のことです。

不正競争防止法では、不正の利益を得る、あるいは他人に損害を加える目的(図利加害目的)で、他人の商品等の表示と同一または類似するドメイン名を使用する権利を取得する行為を禁止しています。

例えば、類似するドメイン名を使用すると、誤ったアドレスを入力したユーザーを誤認させたままアクセスを獲得することができます。つまり、他人と類似するドメイン名を取得することで、事業を邪魔することができてしまうため、禁止されています。

誤認惹起行為(20号)

商品等の原産地や品質、内容等を誤認させるような表示をする行為は「誤認惹起行為」として禁止されています。

例えば、ある食品の名称として特定地域の名称を付することは原産地の誤認を生じさせる可能性があるため、当該地域にて製造等がされていない場合は誤認惹起行為として違法になることがあります。

表示の方法としては「広告」または「取引に用いる書類もしくは通信」が挙げられており、前者の例としてはインターネット上の広告やテレビ、新聞など、後者の例としては注文書、電話、見積書などが挙げられます。

信用毀損行為(21号)

不正競争防止法では、積極的に他社に損害を与える「信用毀損行為」も禁止しています。具体的には「競争相手にあたる他人の信用を害する、虚偽の事実を告知・流布する行為」のことです。

需要者や取引先について共通する可能性があれば、ここでいう「競争関係」に該当すると考えられています(ハンガークリップ特許警告事件 東京地判平成18年8月8日 裁判所ウェブサイト掲載)。

また、具体的な名称を付さなくても、「他人」とは誰のことを言っているのか理解できる場合には、「他人」が特定されているといえます。

▼具体的な事例
「京の柿茶」事件(産地偽装)
概要:加工乳を牛乳と表示、鶏・豚肉を牛100%と表示、偽造品の販売。

代理人等の商標冒用行為(22号)

本来商標権は、登録国においてのみ効力を発揮します(属地性の原則)。しかし、近年はグローバルに展開する企業も少なくないため、国際的に商標権を保護する必要性が高まっています。

そこで同法では、パリ条約の同盟国等おいて権利を持つ者の代理人が、正当な理由なく、権利を有する者の承諾も得ず、当該商標を使用することを禁止しています。

▼具体的な事例
ルイ・ヴィトン事件(東京地裁平30.3.26)
概要: ルイ・ヴィトン社の「モノグラム」を付した模倣品を販売。著名な商品表示の冒用として、財産的損害に加え、ブランドの信用毀損(無形的損害)の賠償を命令。

なぜ不正競争防止法が制定されたのか

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を確保して市場経済を正常かつ円滑に機能させるために、さまざまな法律を補完するように制定された背景があります。

具体的には、不正競争防止法が以下の各法律を補完している関係にあります。

✅ 知的財産法(特許法・意匠法・商標法・実用新案法・著作権法など)
→各知的財産法の規制ではカバーされていない不正競争行為を、不正競争防止法によって規制することにより、網羅的な知的財産権の保護が図られています。

✅ 独占禁止法・景品表示法
→公正かつ自由な競争秩序の維持を目的とする独占禁止法、一般消費者の利益保護を目的とする景品表示法とともに、競争秩序維持を担っています。

✅ 民法
→不正競争行為につき、民法では認められていない差止請求権を特別に定めています。

✅ 刑法・刑事訴訟法
→詐欺・贈収賄・窃盗・横領の各罪の構成要件に該当しない行為であっても、事業者間の公正な競争を阻害する悪質な行為を処罰の対象としています。
また、法人処罰に係る公訴時効期間の延長や、営業秘密侵害罪に係る刑事訴訟手続の特例を定めています。

不正競争防止法違反による罰則

不正競争防止法に違反した場合、どのようなことがペナルティとして課されるのか見ていきましょう。不正競争を行った場合の措置は、大きく民事上の措置と刑事上の措置に分類されます。

民事上の措置とは

まず、民事上の措置にあたる「差止請求」「損害賠償請求」「信用回復措置請求」について説明します。

差止請求
不正競争により営業上の利益が侵害された・侵害されるおそれがある、という場合は、差止請求ができます。
具体的には、「侵害行為停止の請求」「侵害行為をはたらくおそれがある者に対する予防請求」「侵害行為を組成する物の廃棄など侵害の停止や予防に必要な措置の請求」が可能です。
たとえ侵害者に故意や過失がなかったとしても、請求できる可能性はあります。すでに侵害が現実化していて、そのまま放置していると著しい損害が生じる可能性があるなど緊急性がある場合は、侵害行為停止の仮処分が認められる可能性もあります。

損害賠償請求
不正競争により損害が生じた場合は、当該損害の賠償請求ができる可能性があります。被害に遭った側が、行為者の故意または過失を証明することになります。
ただし、営業上の利益に関する損害額に関しては立証が難しいため、立証を容易にするための規定が不正競争防止法に定められています。
信用回復措置請求
不正競争行為によって、信用を毀損されることも考えられます。例えば表示の誤認をさせたことによって、ブランドイメージが失墜することもあるでしょう。このような信用の毀損については、単に損害賠償をしてもらうだけでは十分な救済とならないこともあります。

そこで同法では裁判所を介し、行為者に対し信用回復措置を講ずるよう求めることができると規定されています。被害に遭った会社等は裁判所に申し立て、謝罪広告を出してもらうといった対応を求めることができます。

刑事上の措置とは

不正競争の行為類型のうち、一部に関しては刑事罰が規定されています。

刑事上の措置が定められているのは、以下の行為です。

・営業秘密に係る不正競争行為
・周知表示混同惹起行為
・著名表示冒用行為
・形態模倣商品の提供行為
・技術的制限手段無効化装置等の提供行為
・混同惹起行為
・誤認惹起行為

特に営業秘密の侵害に関しては、他の行為と比べて重い罰則が規定されています。
営業秘密の侵害:10年以下の懲役、もしくは2,000万円以下(海外使用等に関しては3,000万円以下)の罰金、またはその両方
その他の行為:5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはその両方
法人に対しては多くの行為類型で3億円以下の罰金が法定されており、営業秘密を侵害する行為の一部については5億円以下の罰金(海外使用等に関しては10億円以下)が科される可能性があります。

まとめ

不正競争防止法に違反しないためには、上記で記載したように「どのような行為が不正競争にあたるのか」をしっかりと把握しておくことが大切です。
また、競合他社の営業秘密の利用にも注意しましょう。特に同業から転職してきた人が、転職前の会社の顧客データや研究データ、ノウハウなどを使った結果、不正競争防止法違反に該当してしまうケースが考えられます。そういった行為が発生させないためにも機密文書の保管や廃棄などは計画的に対応していきましょう。
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